繭山順吉のメキシコ訪問は、1962年2月のことでした。2度目の欧米視察1961年9月から1962年6月の9ヶ月の行程の途中、空路ダラスからメキシコシティに入りました。
二月十二日(月)晴 メキシコシティ
National Palace
Museum of centropogalia
Cathedral
Main Square
University City
等を回った。一番印象深かったのは考古博物館と大学の建築だった。大学の建築は
Juan O' Gormanという人のデザインによる建物四面全体のモザイクによる。メキシコの歴史が描かれていて1956年の作。建ものだけでなく庭、その他全体の配置が大変美しく大変感心した。又、考古博物館は陳列してあるものはすべて大作のものが多く、今まで日本で見ていたメキシコの小品とは全然おもむきが違い、スケールの大きい、特に石の彫刻は感心した。
二月十三日(火)晴 メキシコシティ
今日は、郊外のティオテワカンにあるピラミッドを訪ねた。自動車で直行すると片道一時間半。途中Tepexpanの遺跡を訪ねたり十六世紀のAcolman古寺を見ていたので二時間半かかってしまった。ただし田舎のドライブは仲々面白く、色々と違ったシャボテンがあったり農家の仕事を見たり女たちの洗濯風景も見ることができた。郊外にはたくさんの工場があった。アメリカの工場が多いそうで、日本のトヨタと、ダットサンの工場があるそうだ。
ピラミッドは太陽と月の二つありその他は祭壇、合計三つの部分からできていて、カイロのピラミッドを思はす立派なものだ。主として観光客は祭壇の中を見るが北京の天壇を思はせる。推定時代2千年前から5千年前ではっきりせぬ由。一九〇三年それまで土に埋もれていたのを発見された由。昼食は付近の洞窟レストランでしたが、アメリカからのたくさんのトーリストでびっくりした。
テオティワカン遺跡 1962年2月
二月十四日(水)晴 メキシコシティ
考古博物館(Museo Nacional de Arqueologia)を再び訪れる。ここの案内人Mr. Davila はメキシコの歴史及び美術史について大変くわしく、わかり安い案内書を出しているし、重要な人だ。今日はこの間にひきつづき約一時間話を聞いた。古代メキシコ人は日とか月とか暦とか時間に深い関心を持っていたこと、1、2、3の数字を書き表したこと、文字も随分前から書いていたこと、メキシコの美術史年代等色々と教えてもらった。
(繭山順吉 1961-1962 Around the World Diary vol.Ⅰ)
※一部に文脈に支障のない省略と改訂を加えています
メキシコシティからロサンジェルスへの旅程の間に、車で峠を越えアカプルコにも滞在しています。
二月十七日(土)晴 アカプルコ
鶏のなき声で目がさめた。朝食を部屋に持ってきたボーイに、今日もいい天気だね、と言ったら、ハイ、毎日よい天気です、と言った。日中百度近くじっとしていても汗がたらたら垂れる。朝モーニングビーチで泳いだ。傘の下の貸しいすが二ペソ(十六仙)コカコラが一ペソ(八仙)とても安い。
【この記事のきっかけとなった展覧会】
特別展「古代メキシコ – マヤ、アステカ、テオティワカン」
2023年6月16日(金)〜 9月3日(日)
東京国立博物館 平成館
巡回 福岡・九州国立博物館 2023年10月3日〜12月10日 大阪・国立国際美術館 2024年2月6日〜5月6日